コリアン楽器街レポート アンニョンハセヨ!
by 師匠


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2004年7月某日、韓国はソウルに行って来ました。昨年も同じ時期に行って来たので今回は2度目です。この時期は日本で言う梅雨に当るそうで、ジメジメしています。在韓中ほとんど雨は降りませんでしたが、晴れ間も見ませんでしたね。
さてソウルの人々も普通に生活用品や贅沢品などを買うわけなんですが、ちょっと面白い特色があって例えば電化製品を買うには電気街へ、ペットを飼いたければペット街へ、という風に同じ商品を扱うお店が建ち並ぶエリアに出向く見たいなんです。その他ウエディングドレス街・バイク街・靴市場・衣類市場等々・・・。逆に言うとそのエリアに行かなければ手に入らないか入り辛いかといった感じです。東京では秋葉原電気街がありますが、別に秋葉原に行かなくても家電は買えますよね?でもソウルはちょっと違うみたい。
楽器に関しても同じ状況でして、楽器商街に行かなければギターはおろかハーモニカすら売ってる店を見かけないんです。(まあツーリストが行ける範囲、見た範囲の話ですが)
で、行って来ました。楽器商街。場所は地下鉄1号線・3号線・5号線の鐘路3街(チョンノサンガ)という駅の近く。仁寺洞(インサドン)という韓国伝統工芸品などを扱うショップが多く立ち並ぶエリアの一角にあります。

 

これがビルの全景です。1階部分は三一路(サムイイロ)という道路(両方向で8車線)になっていて、その道路を跨るようにこのビルは建っています。奥行きは150メートルと云った所でしょうか。でこのビルの2階から3階が全て楽器屋ってんですから凄いのなんのって。(因みに青い看板の左から4文字は楽器商街、センターの大きい2文字は楽園という意味です。後の4文字はワカラン・・)この中に大小さまざまなショップが店を広げているのですが、勿論ギターショップだけではなくてPA専門店やらケーブル専門店やらピアノ・サックス・バイオリン・ハーモニカなんかの教育楽器に至るまで、およそ楽器と名がつくもので手に入らないものは無いといった感じです。大きなショップで60〜70u位、小さな店は10uくらいでしょうか。ガラスに囲まれて独立したブースになってるショップが殆どですが、2階に限っては通路の真ん中にスタンドやショーケースなどを並べているだけのショップもあります。

チューンの専門店。

フォデラを多く扱うショップですが、こんな高いものを誰が買うんでしょうか?ひょっとして韓国製だったりして?


ギブソンのレスポール・スタンダードが270万ウォン(1千ウォン≒100円)、レスポールスタジオが170万ウォンのプライスが見えますね。他店ではスタンダードが245万ウォンでした。

ケーブルの専門店です。ここでLLのスピーカーケーブルをゲット。(日本ではLLのスピーカーケーブルって売ってないんですよ)50cm位で2千5百ウォン(250円!) プラグ、ケーブルともしっかりしたものでしたよ。

これらの楽器街を歩いていると、たまにカタコトの日本語で話し掛けてくる店員もいます。こちらの人は概してフランクでフレンドリーなので臆せず話し掛けてみると面白い話が聞けると思いますよ。

ゴージャスなフィンガーボードインレイにフレイムメイプル(多分)のアーチトップが綺麗なFineというブランド名のコリアンメイドギター。価格は聞いていませんが多分40万ウォン前後かと思います。ちなみにこのショップはBC.RICHを多く扱っていました。

3階なんですが、2階に比べてちょっと閑散とした感じ。手前両側ともブースが空いています。

価格は日本製は日本の価格と同じくらいの感じですがアメリカンギターは確実にこちらの方が高いですね。一方自国製のものはほんとに激安な感じです。幾つか気に入ったギターがあったので試奏させてもらったり、手に取って見せてもらったりしましたが、造りやパーツなんかは特に問題ない感じでした。寧ろこの価格でこんなモンどうやって造れるんだ?っていう感じですね。ただシーズニングが甘いのかネックに問題があるようなものが数本見られました。直りそうなものは良いとして、酷いのは横から見て逆反りしているのが判る位のものもありましたね。(実はそのギター、かなり気に入ったのですが、こりゃロッドで直る範囲じゃないなと思って諦めました)通常日本の楽器屋ではそのようなものは商品として陳列していないので細かなチェックもなしに「気に入った、これ下さい」的に買い物しても問題ないかと思いますが、ここでは試奏・チェックは必須ですね。
で折角ですから買っちゃいました。コリアンメイドのギター。同行した妻は渋い顔をしておりましたが、まあ韓国物産土産だからと訳のワカラン理由を付けて・・・。っていうか一目惚れだったんです。

これ。ゴージャスでしょ?
主な仕様はフレイムメイプル(多分)ブックマッチ・フラットトップ、マホガニー(多分)センター2ピースバック、マホがニー(多分)ワンピースネック、ローズウッド(多分)フィンガーボード、DUNCAN DESIGNED PU(要はダンカンじゃなくライセンス物なのね)、アバロンバインディング、アバロン&パールボディーインレイ、2ヴォリューム・1トーン、スケールは25インチ(多分)といったところ。シリアル#のようなものは見当たりません。


ぶらぶら店内を歩いていて、こいつが目に入ったとたんにビビビツと来ちゃいました。で、ショップに突入し中のオヤジに聞きました。「イゴ オルマエヨ(これ幾らですか?)」そしたらオヤジの野郎2〜3度首を振りやがって、なんかハングルでゴチャゴチャ言うんですがこっちはサッパリ解らず。「じゃあ、取り敢えず試奏させてくれ」と日本語と英語とユンソナの韓国語ガイドを織り交ぜて話したら「それは良いよ」ということで試奏させてもらったんです。ひとしきり弄くった後、改めて「気に入ったので売ってくれ。幾らだ?」と。オヤジ「ウーン」と唸ってちょっと沈黙の後「35万ウォン」と。あたしの頭の中では「えっマジ?3万5千円?35万の間違いじゃねーよな?」と考えているとオヤジが紙に350,000と書いたのです。「おお、間違いない。3万5千円だ。OK、決定!」と頭の中で決定しつつも口から出た言葉は「カカ ジョセヨ(安くしてくれ)」でした。流石にオヤジ速攻でNO!と。次にケースは付くか聞いたらそれは別売りでソフトケースが3万ウォンだと。そこを何とかと頼み込んでソフトケース(ギグバックで結構しっかりしたものでした)を付けてもらって、さらにダダリオの弦も1セットねだって付けさせてきました。このインレイにフレイムメイプルじゃ10万円くらいは言われるかと思っていたのでちょっと拍子抜けでもありました。ただこの35万ウォンが売価なのか定価なのかは判りません。
で、暫く英語と日本語とユンソナの韓国語ガイドを駆使してオヤジと話したのですが、こいつは2000年を記念して造られたモンだと言う事が解りました。とても良い物だとも言ってましたね。もしかしたら最初に幾らか聞いたときにオヤジが首を振りつつハングルでなんか言ってたのは売りたくなかったのか非売品だったのか、かも知れません。
ちょっと驚いたのは、普通日本では品物をケースに仕舞って客に渡すときざっと磨くじゃないですか。でもここでは何もしないんです。磨きもせずにそのまんまケースに仕舞ってハイどーぞ、みないな・・・。
機種名とかブランドとかの詳細は解りませんでした。帰国後、PhilのWEBアドレスまで見つかったのですが、サイトが開かないところをみると現存しないブランド名かもしれません。どなたかご存知の方がいらっしゃいましたらご一報願います。
韓国はソウルに行かれた際には是非立ち寄って見てください。楽しいですよ。


最後にこのPhil-Guitarの詳細を見てみましょうか。

アバロンのボディーバインディングとアバロン&パールによるボディーインレイ。
イーグルが大きく翼を広げて着地する図柄ですね。ごーじゃす!
ストリングエンドは裏通しのタイプです。

正面左下のエルボーはコンター加工されています。

ヘッドロゴ、デコレーションマークともパールのインレイです。

ポジションマークはセルロイドとアバロンのコンビネーション。12フレットには2000年アニバーサリーを示す2000の文字。

ネックジョイントはヒールレスになっていてハイポジションのプレイヤビリティは問題ありません。

ペグはグローバータイプにPhilのブランドネームが入っています。ヘッドそのものはナット位置より数センチ上からスカーフジョイントで接続されています。強度的には多少不安が残るところでしょうか。シリアルナンバーらしきものはどこにもありません。

DUNCAN DESIGNEDの刻印とMODEL HB103N Bのシールが貼ってあるピックアップボトム。Nはネック、Bはブリッジの略ですね。NとBではポールピースのピッチが異なっていてBの方がピッチが広くなっています。
問題はこのメイプルトップが薄い化粧板みたいなものなのか、ある程度厚みのある無垢材なのかなのですが、ピックアップキャピティー内に黒い伝導塗装が施されているため確認出来ません。
まあ価格的から考えても化粧板の線が濃厚かと思いますが・・・。

さて、楽器を買えばこいつを日本に持って帰らなければ為らないのですが、帰りの空港カウンターで機内持込が可能かどうか確認したところ、「オーバーサイズ扱い」だと言われちゃいました。
安物とはいえ気に入って買った楽器ですし、ましてやハードケースでもないので「いや壊れ物なんですが」というと「FRAGILE」のタグを付けてくれて、それでオーバーサイズカウンターに行ってくれ、とのことでした。一抹の不安を抱えつつ、止むを得ずオーバサイズカウンターへ。仁川(インチョン)国際空港の場合、Dカウンターの前辺りにオーバーサイズカウンターがありますのでご参考まで。


成田に到着。手荷物受け取り場にに行くとベルトコンベアーに乗せられて色とりどりのスーツケースが、あっちに当りこっちに当り、ガッツンゴッツンしながら回っています。「おいおい、こんなところにギターが流れてきたら打ち所によっちゃヤバイぞ」と思い、カウンターのオネーチャンにオーバーサイズで壊れ物を預けている旨を話したら、暫くして手で持ってきてくれました。おかげでギターは運送中の事故もなく今我が家に佇んで居ります。


韓国のヴィンテージギターについて


韓国ではどうもヴィンテージギターというものはそれほど持て囃されていないようです。
この楽器商街にヴィンテージ専門店は皆無ですね。
’70後半のギブソン・フェンダーのヴィンテージに成りきれていない、所謂ユースドギターは偶に見かけますが、概してコンディションは良くないみたいでしたね。
この楽器商街の周辺にも数店の楽器屋が点在していますが、そちらにも所謂ヴィンテージ物は見当たりません。
もしかしたら何処かにひっそりとヴィンテージショップが有るのかも知れませんが、○○市場・○○街といったソウルの販売事情を考慮すると、この楽器商街かその周辺になければ存在しないのでは?と思います。
また推測ですが、韓国に於いてギター、取り分けエレクトリックギターなどのLM楽器事態の歴史が浅いのでは無いでしょうか?
第二次世界大戦が終わり、アメリカではフェンダーがブロードキャスターを発表し、ギブソンがこれに対抗するためにレスポールを発表した頃、韓国は朝鮮戦争の真っ只中です。
北朝鮮は戦争中盤で朝鮮半島のかなり南側まで占領しましたから、1953年に休戦した後も、ソウル市内などはかなり荒れ果てた状態だったでしょう。
このような悲惨な状況の中で、LM楽器に現を抜かしている余裕など無かったのではないかと思います。
以上



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Vintage B.C.Rich Maniacs!
04/07/13