File Number 133 Seagull Doubleneck No S/N

今回紹介するのは、非常にレアでおそらく最初のダブルネックである、シリアルのない74~75年製のSeagull Doubleneckである。そもそも、最初のSeagullは74年のWinter NAMMに4本出品されたのだが、73年の時点で16本が製造されていた。Neal MoserがB.C.Richに参加したのが丁度その頃で、残りのSeagullはNealのフルエレクトロニクスサーキットにモディファイされている。これらの16本が終わった後で#1が改めて開始されている。つまり実質4本のNAMMに出品されたSeagull以外は74年以降に製造されたことになる。以下はNealから頂いた原文。

There were 16 Seagulls at BC Rich when I got there. They were made in late 1973. Bernie told me he took 4 Seagulls to the 1974 Winter NAMM held in January at the Disneyland Hotel in Orange County, California.
When I got to BC Rich with the new electronic design in the early part of 1974 I modified the rest of the Seagulls to my design.

After those 16 Seagulls were finished we started with Seagull #1 with my new electronic design.
Seagull #1 was owned by Eddie Estrada who was a friend of Bernies.
Seagull #2 is mine. It has special electronics that I didn't put in other Seagulls. It also has special Inlay which I did myself.

次に、ピックアップに着目すると、オリジナルのSeagullには極初期のものに限りGibson製が搭載されていた。これはGuildに移行するわずかな期間であり、それをB.C.Richで4芯改造していたのである。この個体はまさにその個体である。ベースプレートにPAT.NOが刻印されているTボビンのナンバードピックアップは74年頃から登場しているので、時期的にもマッチしている。また、Guildのピックアップベースプレートには74年の10月の日付がB.C.Richで彫られているのも確認されており、このピックアップは75シリアルの個体にも搭載されている。つまりピックアップの製造時期とギター本体の完成時期は必ずしも一致しない。更に、ダブルネックは当然オリジナルシーガルよりも後の設計である。以上を総合すると、74年後期から75年にかけての個体と考えるのが妥当であろう。以下は購入先のショップからのコメントである。

Neal Moser Confirmed that he personally hand wired and worked on the guitar before it shipped. The Pickups are Gibson "T" bobbins and are 100% original, Moser used these pickups before he switched to Guild pickups in late 75'. All solder joints are untouched, A stunning example of BC Rich's early active electronics Innovations.
Guitar is in excellent condition and original. "Pro" headstock repair does not effect performance and is easily offset by it's rarity, exceptional resonance and playability. This double neck is truly a historical example BC Rich's first years of production.

ヘッドにリペア跡があると記載されているが、全体のダメージから判断してどうも製造段階の木部補修のように見える。


コントロールの説明を追加してみた。スイッチ類は赤ピンにビンテージノブの標準的仕様。ピックアップセレクターはつまみが長いタイプ。76シリアルの個体と比較するとあきらかに仕様が異なっており、その後の試行錯誤の跡が伺える。ボディは比較的コンパクトかつ軽量のため、使い勝手は良好である。

ブリッジ、テールピースのスタッドが最初期のバダスで採用されているもののようである。後年のものとは遊びや仕上げが異なる。

色やピックガードの印象がGibsonのEDS-1275を連想してしまう。

キャビティはかなり大胆に配置されている。ピックガードは飾りではなかった。

どこかに製造年の痕跡があることを期待しつつばらしてみた。。

Tトップが確認できる。

いくらばらしても日付は出て来ない。4芯改造しているため配線が邪魔でピックアップが引き出せない。わざわざシールドを二本にして出している。

ベースプレートも改造されて穴が空けられている。更に他の三つのピックアップは引き出しが対角にあるためキャビティから出せたのはこれだけだった。半田跡からカバーを外して改造後にあえてオープンとして使用していることがわかる。

クロームの102が使用されている。ナットは交換されているかもしれない。

ロッドの開口部。

ここまでの写真でも気付かれたかと思うが、このギターの大部分は一枚のマホガニーから削りだされている。申し訳程度に左右ウイングに貼り合わせのある3ピース構造である。二本のネックのあたまからお尻まで、そしてボディの大部分が一枚のマホガニーというのは採算を度外視した非常に贅沢な造りである。この写真で写っている範囲は一枚の木である。

この無駄に広いキャビティも76シリアルでは洗練されていく。しかし、ダブルネックなので軽量化には一役買っている。使用されている電子部品も古い年代のものである。

ストラップボタンは追加、交換されているかもしれない。

特徴的な美しいヒール形状。

この写真でも一枚板の様子が確認できる。ストラップボタンのエンド側は同じもので、フェルトが挟まれていないが、トップ側はこれとは違うもので、黒いフェルトが挟まれている。サイドのアッパーボタンはさらに違う形状。

パネル形状も独特。

ヘッドにシリアルはない。

12弦側に補修跡がある。

しかし折れたような跡は見られない。化粧板もダメージなし。

仕込み角はかなり浅い。ブリッジはかなりスタッドが締め込まれた状態。

ビッチと比較。大きさも重さもかなり違う。シーガルのケースは見ての通りのフライトケース。メーカーロゴがないがANVILあたりのものだろう。


Vintage B.C.Rich Maniacs!
http://bcrich.net