File Number 135 Mockingbird Hi-A No S/N (Cracker-Jackさん提供)

今回紹介するのは非常にレアなHi-Aの搭載されたシリアルのないモッキンバードシュープリームである。シリアルはないが、ヘッドにバインディングがなく、タップスイッチが一つのタイプなので、製造年は必然的に76、77年のいずれかになる。更にチューナーに着目すると150が使用されているため、おそらく76年製の個体である。77年には殆どの個体が109になっている。

モッキン初年度の76年製はB.C.Rich全体でも300本程度しか製造されていない。また、Hi-A自体もバルトリーニ社がHi-Aの刻印を78年に廃止しているため、73年から約5年間しか製造されていない。http://www.bartolini.net/company.htm 

バルトリーニはベースで有名なピックアップメーカーであるが、このHi-Aの頃は4芯だけでなく、8芯シールドのギター用ピックアップもラインナップしていた。完全モールドタイプでポールピースのないカバーは同様のスタイルのEMGとは異なったオーラを放っている。

この個体は初期のリッチにはめずらしい、派手な杢が採用されている。特にネックのトラは凄みが違う。当時のギターの殆どは杢の派手さによる価格ランクはなかったので、たまたま切ったら派手だった、ということなのだろうか。ただ、ハワイアンコアに関しては、無垢材でこれだけの杢を手に入れるのは今となってはとても難しい。ハワイのウクレレは高級なコアが採用されていることで有名だが、それでもあれだけ薄く比較的小さいからこそ可能なのだ。

ただ、杢にだけ注目するわけではなく、当時のリッチはどんなギターにも高級材をふんだんに使用している。プレーン材でも値段が変わらないのは材自体が高級だからである。むしろハンドメイド故その作業工程にコストがかかっている。

Hi-Aが搭載されただけで顔が変わる。76年のシュープリームはレアなはずであるが、比較的多く日本に輸入されている。これも湯島のミュージックストアの功績によるものである。

派手なトラが目を引くセンター材。黒のポールピースなしのピックアップとしてはEMGが代表格だが、このルックスはEMGを全く連想させない。B.C.Richのトグルスイッチはスイッチクラフト製が採用されているが、ノブが長いものと短いものが存在する。この個体は長いタイプで、このノブは日本では入手不可。

回路はおなじみの76/77仕様、赤ピンスイッチ。ジャックプレートは交換されている。

ウイングの杢が木星の大赤斑を連想させるようにうねっている。センターのトラと相まって絶妙な表情を醸し出している。

バダスのマイナスネジが片方もげている。

仕込み角は標準的。リアのエスカッションがこの年代のディマジオ仕様と比べてやや高め。トラは見る角度で出方が全然異なるが、この角度は特に凄い。

突起のあるRロゴにブッシュタイプの150。ヘッドにバインディングがないのがこの年代の特徴。一時期国産メーカーでコピーされたのはこの年代のものが多い。

ヘッドまで杢が凄い。150も独特の風格がある。

エボニーに白蝶貝のクラウドインレイ。シュープリームのバインディングは古くなると樹脂が痩せて指板との隙間に弦がはさまりやすくなる。

よくあることだが、B.C.Richの場合トップよりもバックの方が派手な個体が意外に多い。このうねりにこのトラ。。

絶品である。

Hi-Aの構造は独特である。キャビティ内には特に年代の決め手になる痕跡はない。

バリトーンのコンデンサの数が多いかもしれない。並列接続で容量をあわせてある可能性がある。


Vintage B.C.Rich Maniacs!
http://bcrich.net