File Number 177 Eagle Bass 80137 (OZさん提供)

 

長らく更新が滞っていたVintage File、今回は無事レストア完了したOZさん提供のイーグルベースのご紹介。

オリジナル B.C.Richもセンセーショナルなデビューから既に40年近く経とうとしている現在、完動の個体を見つけるのが年々困難になってきている。思えば、この個体が製造された1978年当時、現在~1500万円で取引されている54年のストラトや~4000万円で取引されている59年のレスポールはわずか20年程前に製造されていたことになる。

2013年の現在、20年前の93年製の楽器に当時と同等の相場観を見いだせるのかは、使用している材や作り方、製造数、人気、物価、為替レート等によって左右されるのだろう。しかし、54年製のストラトも59年製のレスポールも、20年後に無くなることはないだろうから、相対的に相場は構成されていくのだろう。ひとつだけ言えることは、もう作りたくても当時のものは作れないということである。壊れて減少することはあれど、増えることはない。現存している個体の中から探すしかないのである。

さて、黄金期に製造されたB.C.Richの本数は合計でも12000本位と思われるので、モデル別だと平均しても2000本程度しか製造されていない。(モデルやギター、ベースによるバラツキはかなりある。)壊れて現存していないものも相当数あるはずなので、マーケットになかなか出回らないのである。製造年指定で探そうとすると、フェンダーやギブソンのオールドを探すよりも困難である。所謂ビンテージのレスポールも噂では1500本程度の製造本数である。フェンダーのギターについては大量生産に向いていたのでその10倍程度は製造されていたと思われる。78年製のB.C.Richは700本程度しかない。76年製はわずか300本程である。(webにこんな記事がありました。オールドギブソンの出荷本数 1959年時点でギブソン全体の年間出荷本数は10000本を超えているようです。)

更に時代背景として、B.C.Rich黄金期と同年代のフェンダー、ギブソンは大量生産推進によるコストリダクションが著しい時期でもある。製造本数は更に増えているのであるが、今や70年代から80年代前半にかけてのフェンダー、ギブソンの相場はどうだろう。軽く50万を超えているものも珍しくない。それと比較して高級機で少量生産、当時一世風靡し有名ミュージシャンが挙って使用していたオリジナルB.C.Richの相場はまだまだ割安感がある。ちなみに1976年当時、B.C.Richの標準的なモデルは定価45万円、ギブソン レスポールカスタムの定価は35.2万円、フェンダー ストラトキャスターの定価は22万円である。大卒初任給94300円、1ドル285〜306円の時代である。また1954製ストラトキャスターは700ドルで購入可能だったようである。(54年当時の定価は245.5ドル 59年のレスポールスタンダードの定価は265ドル)新品のストラトの日本での定価とほぼ同じ値段で。76年当時新品のストラト、54年製の中古のストラトとも22万だったものが2013年ではかたや50万、かたや1500万である。

この個体が製造された1978年当時は、為替レートの関係(1ドル180円〜240円)で若干定価が下がっている。
 イーグル、モッキン 39万円
 ストラト 19万円
 テレキャス 17万円
 LP DX 22万円
 LP カスタム 27万円
 L5S 39万円
大卒初任給は105500円

さて、話を戻してやっと見つけた個体でも、いろいろ手が入っていることが殆どで、元に戻そうと思った途端イバラの道を辿ることになる。小さなところでは、ノブやプレート類。これらはごく普通にありそうで、実は一般には流通していないためアフターマーケットでの保守部品入手が非常に難しい。現行品のUSA製でもオリジナルプレートから仕様変更されているためB.C.Richを取り扱う商社経由でも入手できないだろう。ノブも昔散々調べて製造元を突き止めたことがあるが、国内では一切流通していない。

またNeal Moser氏による、これぞB.C.Richの特徴というべきサーキットであるが、これが結構改造されていたり取り外されていたりすることが多い。セカンドオーナーは大抵オリジナルを求めているため、どうにかして元に戻そうともがくのである。一昔前まではそれが不可能だった。ところが現在はNeal Moser氏が直々にこれらアフターマーケットの保守部品を販売してくれているのである。これはオリジナルを愛するオーナーにとっては朗報だろう。回路への価値観は人それぞれと思うが、少なくともオリジナルに戻すという選択肢が与えられたのだから。特に電気回路は古くなると部品の劣化でノイズがどうしても発生しやすくなるため、機能を維持する意味でも安心できる。

 

 

突起付きのRロゴ。ロゴの埋め込み処理も現行品とは全然違う独特の仕上がり。

今回交換されたジャックプレート。この板材が国内では入手できない。

ロッドカバーはオリジナルの1点留めタイプ。80シリアルの特徴。

非常に貴重な資料になるキャビティ内の製造年月日刻印。80137は1978年7月17日製造である。全ての個体に必ずしもこの表記がないのが年代鑑定において悩ましいところだったが、これは非常に重要な証拠である。繰り返しになるが、未だ79シリアルの個体を正式に確認したことがないので、78年の最初が何番だったのか気になるところである。しかし、Mal Stich氏によると、1978年製造本数は全部で700本程度である(Birthday参照)。78000から始まったとして、どう考えても80XXXが78年製にはならないのだ。シリアルにはまだ謎が多い。

奇麗にトラの入ったネック。

そしてこれが今回のメインになるNeal Moser氏による新品のサーキットである。随分すっきりした印象。

比較用に改造されていたサーキット。マスタートーンがブースターオンのみで効くように改造されていたもの。これだけ部品が残っていれば元に戻すことも可能と思われるので、貴重なオリジナルパーツとして保存しておいて頂くと、何かあったときに役に立つかも。

Vintage B.C.Rich Maniacs!
http://bcrich.net